同性パートナーシップ証明制度の取入れ
は、2020年2月現在では、自治体レベル
ですが、以前より増えつつあります。
私の住む兵庫県では、宝塚市、尼崎市、
三田市で導入され、明石市も近々導入予定
です。
しかしながら、政令指定都市でもある
神戸市はいまだに導入も、その気配もない
状況です。
LGBTフレンドリー、性的少数派支援の
取組みは、残念ながら
自治体ごとの格差がある
ことも否めず、また、
日本で同性婚ができるようになる
時期も不明
な状態です。
そのような中、将来自分又はパートナーが
亡くなった後の相続などのことは、
「今は若いということもあって、
死を考える歳でもないので、遺言や
死後事務委任とかを準備する必要も
ないだろう…」、
「パートナーシップ証明制度が導入
されれば、何とかなるだろう…」、
「そのうち同性婚ができるように
なり、法律上の配偶者になれば
何ら問題ないだろう…」、
といった感じに、死を意識する年齢でも
ないこと、将来的にパートナーを配偶者と
同等に扱われる制度ができる可能性を
踏まえて何もしないでいいといった発想が
ありそうですが、
大きな落とし穴があります。
いきなり「死」について考えると
いわれても、重いと思われるかも
しれません。
30代、40代の方で、死を考えられたこと
があるというのは、少ない方になるかも
しれませんねぇ。
しかし、「死」は高齢者の世代だけが
向き合う問題というわけではありません。
40代以降となれば、
食生活、タバコを吸う本数、仕事等による
疲労蓄積、人間関係のストレスなどの
様々な原因によって、予想外の病気に
かかる確率は上がります。
同級生で同じような原因で亡くなられた方が
おられる場合ですと、イメージしやすいかも
しれませんねぇ。
「人生何が起きるか分からないし、いつ
死ぬかも分からない。」といって
しまえば、人間誰にでも当てはまる簡単な
表現なので、そうではなく、
「いつ死ぬか分からないのではなく、
(特に40歳を超えると)死んでも
おかしくないテリトリーに入ってきた。」
という表現の方が正確です。
次に、いざ亡くなった時のことを考える
と、遺言などの生前対策の理由として、
「相続を争族にしないようにするため」と
いうのをもしかしたら聞いたことがある
かもしれませんが、
これ以上に重大な理由があります。
それは、
遺された家族が困らないようにする
ためなのです。
ここでいう「困る」こととは、
口座凍結、
財産の特定
のことで派生する内容です。
では、パートナーシップ証明により公的に
関係性を示せたり、同性婚によって法律上
の配偶者の立場であっても、
いざ亡くなられたときに遺された
パートナーに起こる具体的な困りごとは、
何でしょうか。
1.葬儀代、公共料金、出金歴のトラブルとは…
人が亡くなった後で相続手続で困ること
には、その人を遺産をどう分けるかに
あたって、
多めに欲しいと言い出す相続人がいたり、
そもそも協議する上での紛争性以前に
連絡がつかない人がいたりすることも
あります。
葬儀代を引き出そうと思って銀行の窓口に
行ったら、口座が凍結されて引き出せなく
なることがあります。
口座を凍結されると、入金・出金・振込
は、もちろんのこと、
公共料金の自動引き落としなど一切のこと
ができなくなります。
もちろん、亡くなる前に、葬儀代だけでも
パートナーの口座に移しておくとかできればいいの
ですが、
そういった余裕もなく突然亡くなった場合は、
本当に困ります。
死亡した事実を銀行に言わずバレなければ
口座が凍結されることなく大丈夫だという
発想にもなりそうですが、
ATMでは一度の出金できる額も限度が
ありますし、
後になって、他の相続人や親族などから
「お前が勝手に引き出したな!」、
「何に使ったんだ!」
と言われ、そこでまたひと悶着になって
しまうため、そのようなことは避けた方が
無難です。
このように、お金に関する揉め事を減らす
ことはもちろんのこと、
遺された者に手間がかからないようにする
ことに意義があります。
揉め事というと、大した財産がなければ
問題ないのではと思えそうですが、
実はお金がない人ほど財産が分けにくい
ものなのです。
相続が一種のタナボタなので、今は不況という
こともあって、もらえるものなら少しでも多く
もらおうというのが自然だったりします。
揉めやすいのは、財産として家だけが遺された場合
です。
売却して現金で分ければいいのではないかという
発想にもなりそうですが、そうしたら今住んでいる
方はどうするのかという問題が出てきます。
お金持ちだったら、預貯金と株式と不動産で
分けましょうとかできますが、
現実にはお金がない方ほど分けづらいものです。
また、法律の問題とかけ離れて、
声の大きい人が得をするような力関係も
影響します。
誰かが亡くなると、人間関係が変わる
のは珍しくありません。
また、会社経営をされている方が亡くなる
と、色々な取引や財産・事業の承継を
どうするかの話にもなります。
これは、以前の記事でも触れたことがある
ように、
会社の株式の相続で問題が生じれば、
議決権の都合で重要な意思決定をしていく
のに難があり、事業を継続していく上で
支障を来します。
また、個人事業主が亡くなると、
個人名義の口座でお金を動かしていた場合
は、口座凍結されると、従業員の給料を支
払えなくなる事態も起こります。
では、パートナーシップ証明制度や同性婚
の事情の下で、このような困りごとを
避けるにはどうすればよいのでしょうか。
2.パートナーシップ証明では死後の対策はできない!
パートナーシップ証明制度は、以前の記事
でも触れたことがあるように、
パートナーが法律上の配偶者と同様の地位
になるというわけではなく、
あくまで個別の自治体や民間企業の範囲
で、住居、医療、福利厚生などのことで、
パートナーを法律上の配偶者と同様に扱う
ことにとどまります。
たしかに、住宅ローン(ペアローン)を
組むときや、医療機関での面会・医療行為
の同意などでは、これまでの記事でも
触れたことがあるように、
重要な役割を果たします。
とはいえ、パートナーシップ証明のみを
もって、本人が亡くなったときに相続など
の死後の手続の際にパートナーが相続人と
なるわけではないのです。
そのため、生前に遺言書を作成したり、
死後事務委任契約を交わしておくことが
おすすめです。
これは、内縁・事実婚の異性のパートナー
であっても、以前の記事でも触れたことが
あるように、
同様のことがいえます。
また、パートナーシップ証明のみでは、
パートナーと別れる際に、法律上の離婚ではない
ので、パートナーシップ解消による財産分与などの
ことで難が生じることもあります。
よって、パートナーシップ契約を交わすにも、
別れるときの内容を決めておくことは、以前の記事
でも触れたことがあるように、
財産分与や慰謝料などを踏まえると、重要です。
特に、医療の場面は、ペアローンなどの
ように、その時が来れば考えればよい問題
ではなく、突然予想だにしない状況下で
やってくるものなので、あらかじめ
パートナーシップ契約を交わしておくこと
で後々の困難を避ける余地があるのです。
では、同性婚ができるようになれば、
果たしてパートナーの相続で困ることは
ないのでしょうか。
3.法律上の配偶者でも死後の対策は怠れない!
日本で同性婚が認められて、パートナーが
法律上の配偶者になれる場合、
パートナーは亡くなられた方の相続人に
なりますが、
亡くなられた方にいる親族次第で、
相続人がパートナー以外に誰がいるか
という問題が残ります。
相続人となる者の優先順位は、
①子どもがいれば、配偶者と子ども、
②子どもがいなければ、配偶者と父母、
③子どもも父母もいなければ、
配偶者と兄弟姉妹
です。
この順番は、生計にかかわるかどうかという理由
から規定されています。
子どもがいれば、ご主人の稼ぎで奥様と子どもを
養い、それから両親に仕送りをしたりすることも
あります。
ただ、兄弟姉妹となると、生計が関わらない場合が
多いので、子どもも両親もいない場合に、やっと
兄弟姉妹という順番になるのです。
もし兄弟姉妹が亡くなっていたら、甥や姪が相続人
となること(代襲相続)もあります。
相続人となる子どもには、
養子、再婚前の子、非嫡出子(婚姻関係に
ない男女間で生まれた子で、父との関係
では認知されているケース)も
含まれます。
相続人となる兄弟姉妹には、
半血の兄弟姉妹(片親が同じ兄弟姉妹)も
含まれます。
例えば、お父さんは昔、実は結婚していて子どもが
いて、その後再婚して子どもをもうけていたけど、
その子はお父さんが昔結婚して子どもがいたことを
知らない、といったケースです。
お父さんの相続の場面で、相続人の子が
「え、お父さん、再婚だったの!
しかも子どもいたの!」と驚くことはありますが、
子どもも父母もいなくて、片親が同じ兄弟姉妹が
いる場合、自分が亡くなった後に、半血兄弟姉妹が
相続人になることを把握していないことは意外に
あるので、注意が必要です。
次に、法律上の相続分の割合は、
①子どもがいれば、
配偶者2分の1・子ども2分の1、
②子どもがいなければ、
配偶者3分の2・父母3分の1、
③子どもも父母もいなければ、
配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1
となります。
なので、配偶者(パートナー)が単独で
相続人となるケースでないのであれば、
パートナーが単独で相続財産を承継する
のに、他の相続人と遺産分割協議をする
必要があり、預貯金・不動産などのことで
金融機関・法務局などに提出する書類の
都合上、その者たちの実印の押印・
印鑑証明書も必要となります。
ハンコをもらうか相続放棄をして下さい
とお願いするかは、どちらにしても、
遺されたパートナーにとっては精神的な
負担が大きく、仲が良くても頼みづらい
ものです。
相続人の中には、その協力として
ハンコ代を要求してくるケースも
あります。
また、相続に紛争性の有無以前に、
相続人に所在の知れない人がいる場合に
不在者財産管理人制度が必要になったり、
精神疾患や認知症により判断能力が低く
なっている人がいる場合には後見等の
代理人制度が必要になってきたりと、
より煩雑になることもあり得るのです。
不在者財産管理人制度や代理人制度が何か気になる
方は、下記の記事を読んでいただけましたらと
思います。
もし、他の相続人の協力が得られないと
なれば、遺産承継を進めることが
できないので、そのような事態を避ける
ためにも、生前に
遺言書
を作成しておくことが重要なのです。
また、遺言書を作成するとなれば、
対象財産を特定するので、将来の手続が
スムーズになるメリットがあります。
もし何もせずに、いざ相続が起きると、
どのような財産が遺されているのかを
確定するだけで大変なので、遺言書に
よってその負担を大いに軽減できます。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
将来的なパートナーシップ証明制度の導入
や同性婚が法整備され配偶者になれる
ことを一方的に期待して時が来るのを
待っているだけで何らの対策をしないと、
いざその事態が来た時に、
遺された者がお金のことで困る
ことになります。
そして、制度の導入・同性婚の法整備が
なされても、それで解決されるわけでは
ありません。
これは、同性カップルや内縁・事実婚の
パートナーだけの問題ではなく、
友情結婚などの事情の子なし夫婦、
いわゆるDINKs
(Double Income No Kidsの頭文字の略
で、結婚後、子どもをもたずに、
夫婦ともに職業活動に従事するような
ライフスタイル)の形態にも同じことが
いえるのです。
また、遺言・死後事務委任契約をする際に
も、以前の記事でも触れたことがある
ように、
公正証書
で作成することをおすすめします。
あなたもパートナーとの将来のことで、
一方が亡くなった後について、お悩みでは
ないでしょうか。
いまいちピンと来られていない方は、
ご自身で悩み判断せず、
是非お問い合わせください。
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