性同一性障害とは、生物学的性別
(身体の性別:sex)と
性の自己意識(性自認:gender identity)
とが一致しないために、
自らの生物学的性別に持続的な違和感を
持ち、自己意識に一致する性を求め、
時には生物学的性別を自己の性の自己意識
に近づけるために性の適合を望むことさえ
ある状態を指す医学的な概念です。
そして、法令において、性同一性障害者の
性別の取扱いの特例に関する法律による
定義では、
「生物学的には性別が明らかであるにも
かかわらず、心理的にはそれとは別の性別
であるとの持続的な確信を持ち、かつ、
自己を身体的及び社会的に他の性別に適合
させようとする意思を有する者であって、
そのことについてその診断を的確に行う
ために必要な知識及び経験を有する二人
以上の医師の一般に認められている
医学的知見に基づき行う診断が一致して
いるもの」
とされています。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/診断書.jpg)
そもそも、日本国内では、性別適合手術が
公に行えないという状況が長く続いていました。
1964年に、とある産婦人科医師が、
当時ブルーボーイと呼ばれていた
男娼の職にある20代の戸籍上の男性3人に
対して、性別適合手術(当時の表現では
性転換手術)を十分な診察を行わずに
行ったとして、麻薬取締法違反と
優生保護法(現在の母体保護法)違反に
より逮捕され、1969年に有罪判決を
受けた事件があります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/03/刑法.jpg)
これが、当時の優生保護法第28条
「何人も、この法律の規定による場合の外、
故なく生殖を不能にすることを目的として手術又は
レントゲン照射を行つてはならない」
に違反したものとされました。
この手術の際、現在の性同一性障害の診療で
行われているような、
「本当に手術の必然性があり、それは個人の嗜好や
職業上の利得を動機とするものではない」
という判断を下すに足るような十分な精神科的診察
は行っていませんでした。
同時に当時は売春の取り締まりが社会的な課題と
なっていた時期であり、戸籍上の男性が性転換手術
を受け売春をするも、法的には「男性」として
扱われるので十分な取り締まりができないことが、
事例件数としては少数ながらも、問題視されて
いました。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/警察.jpg)
そのことで、警察などの関連機関は、その大元を
断絶しようという必要性に駆られていたのです。
このように、もともと日本国内では、
自己の生物学的性別に違和感を持ち
生物学的性別を自己の性の自己意識に
近づけるため性別を変更する医療的措置
(いわゆる性別適合手術)は、
正当な医療行為ではなく、違法である
という扱いがあり、刑事罰の対象とされる
こともあったのです。
しかし、その後不遇な時代が続くも変わる
きっかけがあったのです。
1.性別適合手術が正当な医療行為になってから…
1997年に日本精神神経学会・性同一性障害に
関する特別委員会が、ガイドラインの初版を策定
し、
1998年には、埼玉県医科大グループが、
女性から男性への(FTM)性別適合手術の施術を
公的な医療行為として行っています。
そして、2001年以降、性別適合手術を
終えた性同一性障害の当事者たちが、
戸籍の続柄の記載に錯誤があるとして、
戸籍法13条に基づいて家庭裁判所に
戸籍訂正の申立ての動きを講じました。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/家裁.jpg)
しかしながら、その結果は却下となった
ため、当事者たちは法的に性別変更を
認めるための立法への運動に向かっていく
のです。
このように、性的違和を抱える当事者の
ニーズに応える態勢は進みました。
ここで、性同一性障害と性的違和って言葉
が違うからには概念がどう違うのだろうと
いう疑問が浮かびます。
2.性同一性障害と性的違和の持つ概念とは…
主な性同一性障害という中心的な部分からみれば
周辺の立ち位置に当たる
性別違和症候群(gender dysphoria)の当事者も
存在します。
簡単にいうと、性同一性障害を医療の対象となって
いるのに対し、
性別違和症候群においては医療の対象と予定して
いない立ち位置になっているのです。
ただ、国際的には、性同一性障害という
医療診断上の概念よりも、より広義な
トランスジェンダーという概念が一般的
です。
そして、国際的診断基準に照らしても
問題視されているのが、
性同一性障害特例法の手術要件です。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/手術.jpg)
現にWHO(世界保健機構)は、
生殖腺の切除を性別取扱変更の要件として
強制することはできないとしています。
たしかに、性同一性障害という概念は
当事者の医療ケアを保障するきっかけには
なっていますが、今後も当事者のニーズに
寄り添いながら、概念の再検討と医療など
のケアの保障を両立させることが必要に
なってきます。
では、自分の性別に違和感があることで
どうすればよいのでしょうか。
3.自分のセクシュアリティを決めるのは自分といえる!
あくまで性同一性障害とは、医学的な概念
なので、性同一性障害であることと
トランスジェンダーであることは一致する
とは限りません。
性同一性障害の診断を受けることで、
ガイドラインに則りホルモン治療や
性別適合手術などの医学的措置を受ける
ことができ、場合によっては
性同一性障害特例法の要件を満たすことで
戸籍を変更できる可能性がある、というの
にすぎません。
なので、性別に違和があるから性同一性
障害の診断を受ける義務はないですし、
単に個人の選択です。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/07/性別はどっち-300x199.jpg)
制度や医療においては、あくまで講じる
ことができる手段であり、
当事者自身の判断が尊重されるべきでは
ないでしょうか。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
性同一性障害の診断の内容次第で、
その方自身の何かが変わるわけでは
ありません。
本人の素直な想いや置かれる状況に
おいて、尊重されることが第一で、
性同一性障害の診断は、当事者が人生で
抱える困難を解決するための手段の
ひとつにすぎないのだという考えは
とても重要だといえます。
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