性刑法のガラパゴス化を打破。とはいえ、セカンド・レイプなどの問題も残っている!

日本の刑法では、2017年の改正前までは、

「強姦罪」は以下のように定められていました。

 

 

 

 

 

 

「第177条 暴行又は脅迫を用いて十三歳

以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪

とし、三年以上の有期懲役に処する。

十三歳未満の女子を姦淫した者も、

同様とする。」

 

 

この条文内容では、男性の性的指向が女性

であるという前提の内容ですねぇ(-_-;)

 

 

 

 

 

男性が男性に対して暴行又は脅迫を

用いて、肛門性交や口腔性交を強いた場合

にはどのように処罰されるのかという問題

が生じます。

 

 

改正前の刑法では、「強姦罪」ではなく、

「強制わいせつ罪」を適用していました。

 

 

「第176条 十三歳以上の男女に対し、暴行

又は脅迫を用いてわいせつな行為をした

者は、六月以上十年以下の懲役に処する。

十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為

をした者も、同様とする。」

との規定になっていました。

 

 

加害者の犯意、被害者の肉体的被害・

精神的苦痛、客観的な行為態様などは、

強姦とほぼ同様にもかかわらず、強姦罪

よりも法定刑が軽いのです。

 

 

 

 

 

 

明らかな相違点は、被害者が妊娠可能な

女性の場合、強姦が妊娠という結果を

もたらすということから、異なる罪名が

適用されていることがうかがえます。

 

 

強制わいせつ罪(176条)と強姦罪

(177条)との関係は、一般法と特別法の

関係にあると考えられています。

 

 

つまり、姦淫はわいせつな行為の一種で

あり、刑法は、後者よりも前者を重く処罰

する趣旨で、別に条文を定めたと

思われます。

 

 

ただ、この罪の重さの違いがどこからくる

のかという疑問が浮かんできます。

 

 

 

 

 

 

 

1.性刑法の保護法益とは…

強姦罪の処罰規定の加重根拠は、旧刑法の

時代にさかのぼってってみてみると、

血統の紊乱(ぶんらんと読み、秩序・風紀

などが乱れることを意味する。)が

考えられます。

 

 

明治維新後、日本は近代法整備に際し、

フランス刑法を参考にしており、

1832年、その法に強姦罪が導入され、

その目的は、妻が夫以外の子を出産して

嫡出の親子関係が崩れるのを防止する

という点にありました。

 

 

 

 

 

 

旧刑法には、姦通罪として、妻が夫以外の者と

性交することが処罰の対象となっていました。

 

 

なので、血統や嫡出関係が重要な保護法益

とされていていました。

 

 

妻に対する夫の支配権や、未婚女性に対する家長の

支配権を守ることが制定目的ともとれそうですが、

だとしたら強制わいせつ罪のみで足りるでしょう。

 

 

そこで、もう1つの根拠として、夫婦間の

強姦が不成立であることが挙げられます。

 

 

欧米諸国では、強姦罪の被害者となり得る

のは、妻以外の女性とされ、夫婦間の強姦

は認めておらず、日本の刑法でも、

特別の事情がない限りは、そのように解釈

するのが通説となっています。

 

 

これは、婚姻によって妻には性交応諾義務が生ずる

という理由に基づくものですが、

その根底には、夫婦間での妊娠・出産は、

血統や嫡出関係を乱さないという前提があります。

 

 

ただ、なぜに、血統や嫡出関係がこれほど

重視されてきたのかという疑問が

浮かびます。

 

 

それは、父系血統主義を基盤とする

家父長制度が社会体制を支配しており、

維持されるべきシステムだと考えられて

きたことが理由になります。

 

 

 

 

 

位置づけられ方の次元の話では、強姦罪が

個人的法益ではなく、社会的法益の分類に

グルーピングされている犯罪であること

からも、そのことがうかがえます。

 

 

日本において、血統や嫡出関係に対する

執着には、根深いものがあります。

 

国籍法では、1984年の改正まで父系血統主義を

採っており、父が日本国籍の場合のみ子は

日本国籍を取得できる旨が規定されていました。

 

また、2013年9月の最高裁判決まで、

民法900条4号但書において、非嫡出子の相続分は、

嫡出子の相続分の2分の1との

規定になっていました。

 

さらに、皇室典範は、現在でも男系男子主義です。

 

 

強姦罪は女性のみを被害者としていること

で、一見女性を保護するための規定とも

考えられそうでしたが、実際には、

女性差別・女性への支配や抑圧を前提と

する家父長制度の延長線上に設けられた

犯罪類型というのが、本当の正体です。

 

 

 

 

 

 

 

そして、1960年代以降、欧米諸国の

フェミニズム運動により、このような趣旨

のある強姦罪の規定が厳しく非難され、

その後の法改革に結びついているのです。

 

 

2017年の刑法改正によって、条文は、

以下のようになりました。

 

「第177条 十三歳以上の者に対し、暴行

又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は

口腔性交(以下「性交等」という。)を

した者は、強制性交等の罪とし、

五年以上の有期懲役刑に処する。

十三歳未満の者に対し、性交等をした者

も同様とする。」

 

 

男性も被害者の対象になり、親告罪の規定

も削除されました。

 

また、18歳未満の者に対する監護者

わいせつ罪及び監護者性交等罪も新設

されました。

 

 

ジェンダー・セクシュアリティ中立的な

兆候が、ようやく現れてきつつある状態

です。

 

 

しかし、改正後の規定もまだ十分とは

いえず、裁判官による法解釈や法適用の

場面では、従来と相も変わらず、無意識的

な性差別・被害者への抑圧が

引き起こされる危険性があるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

代表的な問題が、「被害者の同意」の有無

が鍵になっている流れと、それを探って

いくために起きる「セカンド・レイプ

です。

 

 

では、セカンドレイプとは何なので

しょうか。

 

 

2.セカンド・レイプとは…

セカンド・レイプとは、強姦罪において

問題となる「被害者の同意の有無」の証明

をしようとして、二次的に起きる、

いわば「心の強姦」というものです。

 

 

よく見られる訴訟上の手法として、被害前後の

被害者の言動やこれまでの性経験、従事する職種等

から被害者の性道徳観念の低さを指摘して、

同意があったことを間接証拠として提示する方法

です。

 

 

 

 

 

 

 

例えば、被害者の女性の経歴で、

ファッションモデル、イベントコンパニオン、

芸能プロダクションのエキストラ・スタッフ等を

挙げるなどがあります。

 

 

つまり、被害の再体験といわんばかりの

精神的苦痛に加え、性道徳などによって

被害者自身が訴訟の中で裁かれるという

現実は、本来人権の砦である裁判所に

おいてさえ被害者が性的に支配されて

しまうのです。

 

 

3.まとめ

いかがだったでしょうか。

 

性刑法において、ジェンダー・

セクシュアリティ中立性の面では前進した

とはいえ、セカンド・レイプなどの問題は

まだ残ったままです。

 

 

今後の性刑法改革においては、性犯罪規定

の制定目的や保護法益の次元からの

さらなる根源的な問い直しを続けていく

必要が大いにあるといえるでしょう。

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