例えば、同性カップルの方々で、
お互い自分自身が昏睡状態などになって、
意思確認ができなくなった場合に、
医療行為の開始・不開始、医療内容の
変更、医療行為の中止などの決定権を、
パートナーに託すことはできるのかという
問題があります。
このような終末期医療の決定については、
厚生労働省による「終末期医療の決定
プロセスに関するガイドライン」に沿って
運用されています。
まず、患者本人による決定を基本とし、
患者の意思を確認できない場合には、
家族が患者の意思を推定できるときは、
その推定意思を尊重する扱いになって
います。
そして、ここにいう「家族」に
同性パートナーが含まれるのかどうか
という疑問が浮かびます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/パートナーシップ契約-300x265.png)
このガイドラインにおいて、家族というのは、
「家族とは、患者が信頼を寄せ、終末期の患者を
支える存在であるという趣旨ですから、
法的な意味での親族関係のみを意味せず、
より広い範囲の人を含みます。」と説明されて
います。
このことから、法的な家族に匹敵する程度
の十分な信頼関係が認められる関係性で
あれば、法的関係の有無に限らず、家族に
該当する可能性はあります。
なので、同性パートナーであっても、
長年同居していたり、同居はして
いなくても長年連れ添っていたりする事情
などがあり、お互いに深い信頼関係が
認められるようなケースであれば、
「家族」に該当することは十分に
考えられます。
よって、終末期医療において、自分自身の
意思を代弁する者として、
同性パートナーの意思が尊重される
可能性はあるのです。
しかしながら、実際の運用自体は、現場に
委ねられるため、医療施設・医療の方針に
応じて対応は区々になる傾向があります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/10/医師.gif)
また、親族によりパートナーの意向が無視
される可能性もあります。
このような事態に備えるには、お互いの
関係が「家族」に該当するものであること
を理解してもらうための手段として、
書面を事前に作成する
ことが有益だといえます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/書面.jpg)
では、どのような形態の書面を作成すれば
良いのでしょうか。
1.医療同意契約書・パートナーシップ契約書などの作成が有益!
本人が自己の意思を表明できなくなった
場合に備え、医療同意権を同性パートナー
に委ねるには、
第一に、「医療同意契約書」の作成が
考えられます。
また、パートナーシップ契約書を作成する
際に、医療同意に関する条項を含めておく
方法もあります。
パートナーシップ契約書は、
お互いが男女の婚姻関係に匹敵する真摯な関係性で
あることを定める書面なので、
医療同意に関する条項を明記していなくても、
お互いの関係が「家族」に該当するものであること
を第三者に理解させるのに有益だという考え方も
ありますが、より安全に備えるには、
医療同意に関する条項は明記した方が良いです。
また、これらの書面は私文書で作成
しても、契約の効果は生じますが、
証明力を高めるためにも、
公正証書で作成する
方が望ましいです。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/公正証書-221x300.jpg)
では、任意後見契約の公正証書の作成
では、医療同意に関して備えることが
できないのでしょうか。
2.任意後見契約では、医療同意については対象外!
任意後見(後見制度)は、以前の記事でも
触れたことがあるように、
本人が、自分で物事を判断する力が衰えて
しまった場合に、サポートする制度です。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/任意後見.jpg)
任意後見人の立場として、本人のために
行うのは、財産管理と身上監護です。
この範囲は、費用の支払や不動産の処分などの
お金の管理や、施設や入院先の選定・契約などの
生活の場の確保を指します。
しかし、医療行為における同意権は
ありません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/マスオさん.jpg)
なので、任意後見契約の内容に、
パートナーに終末期医療の同意権を付与
することはできないのです。
では、ほかに医療同意を踏まえると、
どのような制度があるのでしょうか。
3.緊急な場合には…
お互いのパートナーシップ関係を示すため
に、自治体が証明する
パートナーシップ証明を活用するのも、
医療同意においては有用的です。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/パートナーシップ制度.jpg)
自治体により手続内容は様々ではある
ものの、公の機関に認められている以上、
お互いの関係が婚姻に匹敵する真摯な
関係性であることを第三者に理解して
もらいやすくなります。
また、本人が、緊急時の連絡先として
パートナーの連絡先・終末期医療の同意を
パートナーに委ねる旨を記載した
緊急連絡先カードを財布などに入れて携帯
しておくことも考えられます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/12/緊急連絡先カード-212x300.png)
もちろん、医療同意契約書や
パートナーシップ契約書などと比較すれば
証明力は劣るものの、突然の事故や病気
などで意識不明になった場合にパートナー
の存在とパートナーに医療の同意を
委ねたい意思を取り急ぎ第三者に知らせる
方法として一定の効果は期待できます。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
医療行為は身体を傷つけるリスクも伴う
ため、医療同意はシビアな考え方では
ありますが、家族による医療同意権の行使
自体は法的な根拠が明確ではない分、
同性パートナーに認められないわけでは
ないのです。
あなたもカップルにおける医療行為の
同意権・決定権について、同じような
ことでお悩みではないでしょうか。
いまいちピンと来られていない方は、
ご自身だけで悩み判断せず、
是非お問い合わせください。
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