内縁・事実婚の相続・生前対策は、同性カップルの事情より大丈夫は勘違い!

現在、日本ではまだ同性婚が認められて

いません。

 

結婚は、あくまで法的な手続にすぎず、

大したことでないようにも思えますが、

本人どうしが愛し合っているにも

かかわらず結婚が制度上できないのは、

人生の選択肢の自由を著しく妨害している

という意見もあるようです。

 

 

パートナーの結びつき方は、決して

男女の結びつき方だけではないはず

です。

 

 

 

 

 

 

一方、お互い異性なので制度上結婚は

できるものの、結婚しない選択が

あります。

 

 

近年では、家族の在り方や、パートナーの

結びつき方は多様化し、決して法的な婚姻

という形にとどまらず、自らの意思で

婚姻届を出さない縛られない選択肢を

採るパートナーも増えています。

 

 

そして、このような異性間カップルのこと

事実婚内縁といわれています。

 

 

元々、日本には「家」という文化があり、

婚姻は単なる男女の結合というわけではなく、

家どうしの結合と考えられ、明治民法下では

婚姻に戸主の許可が必要でした。

 

 

漫画やテレビドラマの結婚挨拶のシーンで

「お父さん、娘さんを僕にください」というような

セリフがよくあるのは、結婚に戸主の許可が必要

だったことの名残にも思えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

結婚したいのに戸主の許可が下りないカップルに

とっては、婚姻届を出せない婚姻の実態はある

ということになります。

 

これが、従来から呼ばれる「内縁」を意味します。

 

 

一方、「事実婚」とは、婚姻届を自主的に出さない

婚姻という意味がある点で、内縁とは区別されて

います。

 

 

なので、本来の意味での内縁は減少しており、

事実婚が多いといえます。

 

 

パートナーシップ証明が導入されている

自治体によっては、同性カップルのみを

対象にするのではなく、事実婚のカップル

も含まれるほど、事実婚の保護も注目

されています。

 

 

ただ、事実婚に対しては、

「法律婚からの解放」という肯定的な見解

もあれば、

「家族秩序を揺るがせる」という否定的な

見解もあります。

 

 

事実婚の保護の捉え方にしても、

「法律婚できない方々をどのように保護する

べきか」から

「法律婚を(できるにもかかわらず)しない方々に

対して、どの程度の保護を与えるべきか」という

変移がみられます。

 

 

従来の捉え方は、婚姻の実態や個人の選択の自由を

重視して保護を図ろうとする側面が大きいのですが、

変移後の捉え方は、法律婚を選ばない者を保護する

必要がないことを前提にした考えに基づいています。

 

 

ここで、事実婚(内縁)のメリット・

デメリットと、デメリットを補完するため

の方法は何なのかが問題となります。

 

 

では、内縁(事実婚)は、どの程度法律婚

に準じた扱いになっているのでしょうか。

 

 

1.内縁(事実婚)は法律婚とどこまで扱われ方が異なるのか…

内縁とは、実質的に夫婦同様の共同体で

ありながら、法の定める婚姻の届出がない

ために、法律上の夫婦と認められない男女

の結合関係をいい、法律上には規定はない

ものの、婚姻に準じた関係とされています

準婚理論)。

 

 

また、裁判例では、内縁を有効な

婚姻の予約」として捉えて

婚姻予約理論)、

正当な理由なく一方的に内縁関係を破壊

した場合、破棄された者は、相手方に

対して婚姻予約の不履行を理由として

損害賠償請求でき、さらに不法行為を理由

とした損害賠償請求もできます

 

 

 

 

 

 

また、例えば、夫の母の嫌がらせにより内縁関係が

破綻した場合のように、内縁の当事者ではない者で

あっても、内縁関係に不当な干渉をして破綻させた

親族も、不法行為者として損害賠償責任を負います。

 

 

ただ、内縁は婚姻に準ずるものとはいえ、

届出を欠くので、婚姻届に基づく戸籍の

記載を前提として画一的に認められる効果

については準用が認められません

 

 

なので、婚氏(夫婦同氏の原則)や、

配偶者の相続権などの規定は準用

されません。

 

 

とはいえ、法律婚をした夫婦のどちらかは

姓を変えなければならないので、夫婦別姓

を実現できることを、メリットと

捉えられる場合もあります。

 

 

通称名や旧姓を使える場面も増えてはいる

ものの、男女平等や個人の

アイデンティティの観点から戸籍上の姓を

変えたくない方もいます。

 

 

そして、法律婚(婚姻関係)を解消する

には、「離婚」する必要があります。

 

 

 

 

 

 

離婚をすれば、旧姓に戻したり、戸籍に

離婚した旨が記載されることで、

社会生活上様々な影響が出ます。

 

ただし、希望すれば旧姓に戻さない選択をすること

もできます。

 

 

離婚において、お互いに協議できなくて揉めると

なれば、最終的に調停や裁判で争うことになります。

 

 

一方、内縁ではその解消に離婚のような

法律上の手続は必要なく、姓や戸籍の問題

で悩むこともありません

 

ただし、子どもがいる場合には事情が異なるので、

注意が必要です。

 

 

夫婦同姓について、最高裁は平成27年時点で合憲と

判断しており、夫婦別姓に向けた潮流は

まだ見えていませんので、

現段階では内縁(事実婚)でしか別姓をなし得ない

状態です。

 

 

内縁(事実婚)であっても、夫婦の

生活共同体に着目する婚姻の効果について

は、婚姻に関する規定の準用認められて

います

 

 

具体的には、

 

同居・協力・扶助義務、

 

 

貞操義務、

 

 

 

 

 

婚姻費用の分担、

 

 

 

 

 

 

日常家事債務の連帯責任、

 

 

帰属不明な財産の共有推定

 

などがあります。

 

 

また、内縁を(合意)解消する場合、

法律婚の離婚と状況がほぼ同じことから

相手方に対して財産分与を請求できます

 

 

ただし、内縁夫婦の一方が死亡したことに

より内縁関係が解消された場合にまで、

財産分与に関する規定の類推適用により、

財産分与を受けることはできません

 

 

これは、民法上ある人が死亡した場合には、

遺産は相続によって承継させるとしているのにも

かかわらず、内縁の死別の場合にのみ、

遺産を財産分与によって清算するというのは、

法が本来予定しているシステムからすれば異質

だからです。

 

 

そこで、内縁関係においては、

一方当事者が死亡した場合に、

生存当事者には相続権がない以上、

あらかじめ死別の事態に備えておく

必要があります

 

 

では、どのような方法で行い、何に注意

すべきなのでしょうか。

 

 

2.内縁(事実婚)関係の死別で準備することとは…

内縁関係で一方当事者が死亡した場合

には、生存当事者には相続権がないので、

財産の承継をできるようにしておくには、

生前に遺言書を作成する

方法しかありません

 

 

 

 

 

 

遺言書の作成の際には、遺言者の

法定相続人をあらかじめ把握した上で、

遺留分遺言執行者などの点にも注意する

必要があります。

 

 

また、たとえ死亡当事者に相続人がいない

ときには、生存当事者は特別縁故者として

相続人不存在の場合における財産分与の

手続により相続財産を取得できる場合が

ありますが、以前の記事でも触れたことが

あるように、

同性カップルのパートナーに法定相続人がいない場合…特別縁故者で注意することは…

2017年12月10日

 

手続に長く時間がかかることや、財産分与

が認められるかどうかが家庭裁判所の判断

次第なので、生前に遺言書を作成しておく

ことの方が良策です。

 

 

そして、内縁関係の死亡当事者に相続人が

いる場合であっても、生存当事者の居住権

ついては、判例上保護を図っています

 

 

例えば、内縁関係にあるA・Bが、賃借人をAとする

賃貸建物に居住していた場合、

Aが死亡すると、生存当事者BはAの相続人賃借権

を援用して、賃貸人に対して建物に居住する権利を

主張することができます

(最高裁昭和42年2月21日判決)。

 

 

 

 

 

ちなみに、死亡当事者に相続人がいない場合の

借家権については、借地借家法上、生存当事者

承継します

 

 

ただし、賃貸借契約の特約で排除することできる

ので、注意が必要です。

 

 

また、Xの内縁の妻Yが、Xと同居していたX所有の

建物にXの死亡後も引き続き居住している場合、

Xの相続人がYに明渡請求あった場合でも、

相続人にその建物を使用しなければならない

差し迫った事情がなく明渡によりYの家計が

重大な打撃を受けるおそれがあるときには、

明渡請求は権利の濫用として許されず、

Yは明渡を拒むことができる、とされた判例

(最高裁昭和39年10月13日判決)もあります。

 

 

 

 

 

 

このように、内縁関係の生存当事者には

相続権がない以上、生存当事者の居住権は

保護されないのが原則ですが、判例などに

より保護される場合があるのです。

 

 

では、同性カップル間では、内縁・事実婚

のように婚姻に準ずる関係をどの程度

当てはめているのか、その余地があるので

しょうか。

 

 

3.同性婚の代替のための措置が提案されているみたいだが…

まず、内縁(事実婚)のカップルの保護に

おいては、判例や解釈以外にも、個別法の

規定により認められているものが

あります。

 

 

例えば、

 

厚生年金保険の遺族年金の受給、

 

国民年金法の第3号被保険者制度の利用、

 

DV防止法による保護命令の発令

 

 

 

 

 

などがあります。

 

 

しかし、現段階において、同性カップルに

ついて、内縁・事実婚の法理適用の是非が

明確ではなく、一律なものでも

ありません

 

 

 

 

 

 

ただ、DV防止法では、交際相手の性別を定めて

いないので、一定の要件を満たせば、

異性間DVと同様に保護命令が発令されます。

 

 

日本では、同性カップルの共有財産など

を、男女の内縁関係に類似した関係と

みなし、ある程度は法律が保護するような

判断を下した裁判例もありますが、

認められている権利・認められていない

権利の基準は不明確で、司法・行政に

おいても、事例・担当する者などによって

判断が異なります

 

 

よって、同性カップルの生活においては、

法的な保護が及ぶかどうか予測不可能な

状況になっていることが問題なのです。

 

 

 

 

 

 

ほかに、生命保険金の受取人、携帯電話

利用料の家族割引、航空会社のマイルの

シェアなど、

同性カップルに利用を認める動きは、

以前よりはあるものの、すべてではない

です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、同性カップルの法的保護においては、

実務的な観点から、パートナーシップ法

(シビル・ユニオン)などで、夫婦と同一の権限を

同性カップルにも認める法律を制定して、

夫婦としてではなく家族として籍の登録を認める

方向が望ましいとされている提案もあるようです。

 

 

4.まとめ

いかがだったでしょうか。

 

家族のかたちや、パートナー・共同体の

在り方は、ますます多様化しています。

 

 

 

 

 

 

内縁(事実婚)であっても、

 

不妊治療の助成金、

 

 

 

 

 

 

 

所得税・相続税などの配偶者控除、

 

 

 

 

 

 

医療の同意や面会

 

 

 

 

 

 

 

などの問題もあります。

 

 

緩やかな結婚を望むのに適している

内縁・事実婚であっても、同性カップル間

の場合と同様に生前に様々な対策を講じる

ことは重要といえます。

 

 

また、異性間の内縁・事実婚、日本で将来

同性婚が認められた場合に同性間でも

内縁・事実婚が当然に適用される場合で

あっても、お互いの関係が目に見える形の

証拠として、

書面化しておく

ことも重要なので、以前の記事でも

触れたことがあるように、

同性カップルがパートナーシップ契約で将来の紛争予防!何を決めるべきかよく分からない方へ。

2017年9月1日

 

パートナーシップ契約に値するような

内縁(事実婚)契約で、日常生活で

起き得る様々な場面や別れるときの

財産分与や慰謝料などを想定して条項を

規定しておくことも大切ですねぇ。

 

 

あなたも内縁・事実婚などについて、

同じようなことでお悩みではないで

しょうか。

 

 

いまいちピンと来られていない方は、

ご自身だけで悩み判断せず、

是非お問い合わせください。

同性カップルの相続・生前対策の教科書無料プレゼント!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です