交際相手と同居していると、パートナー
から暴力を振るわれたり、暴言を
浴びせられたりするのは、異性カップルで
あっても同性カップルであっても、
起こり得ます。
暴力の態様は、殴る・蹴るなどの身体的
暴力のみならず、
暴言を吐くなどの精神的暴力や、
望まない性的行為を強要するなどの
性的暴力、
収入がない相手方に対して生活費を
渡さないなどの経済的暴力など、
様々なケースがあります。
暴力の被害を受けたときに深い傷を負う
ことのほか、相手が暴力を振う原因が自分
の方に非があるなどのように考え、
自信喪失や自己評価を低くしてしまうこと
もあります。
DVの被害を受けた場合には、加害者たる
パートナーから離れることは有効な
ものの、暴力の程度や相手方との関係性や
経済的事情などから、すぐに交際を
断ち切ることや、別居に踏み切ることが
難しいケースの方が多いのが現実的です。
また、同性カップルの事情自体を周囲に
秘していると、大事にしたくはないという
考えが強くなり、相談そのものをためらう
ことも、珍しくはありません。
しかし、
時間が経つにつれDVが
エスカレートする
ことも考えられます。
そのような場合には、警察、DV相談窓口
などへの相談や、裁判所による保護命令
などの措置を採ることが有用です。
またシェルター避難への対応も考えた方が
良いこともあります。
では、DVへの対策や、同性カップル間の
ケースではどのようになるのでしょうか。
1.警察へ相談したいが、刑事手続に抵抗があるときは…
加害者たるパートナーから暴力を受けて
いることを、警察に相談する際、
今後のことも踏まえれば、加害者を逮捕
してもらうなどの刑事手続までは
希望しないというのも考えられます。
そのようなケースで、加害者がつきまとう
行為などをするようになった場合には、
ストーカー規制法(ストーカー行為等の
規制等に関する法律)に基づく対応を
とってもらうことが挙げられます。
ストーカー規制法では、その適用対象となる者は、
「特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又は
それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を
充足する目的」を有する者と規定されています。
なので、性別は問われていないので、
同性カップルとなるレズビアン、ゲイ、
性別取扱いの変更をしていない
トランスジェンダーなどのケースでも、
上記のような目的をもって、つきまとい・
待ち伏せ・押しかけなどの行為をすれば、
ストーカー規制法の適用を受けることに
なります。
警察でできる対応を考えるのであれば、
警察署長等に警告の申出を行って、
つきまといなどを繰り返す加害者に対して
やめるよう警告してもらうことが
できます。
そして、相手が警告に従わずにつきまとい
などをしてくる場合には、公安委員会が
聴聞を経て、その行為の繰り返しなどを
禁止する命令を発してもらうことが
できます。
また、警告の申出が行われた場合に、被害者の身体
の安全などを確保するために緊急の必要性があると
認められたときは、相手に聴聞の機会を与えずに、
ストーカー行為を禁止する仮の命令を発してもらう
ことができます。
相手が禁止命令に違反してストーカー行為
をすると、1年以下の懲役又は100万円以下
の罰金が科されます。
また、暴力の振るい方次第では身の安全の
ために、避難先の確保が重要な場合も
あります。
では、DVにおける避難先は、どういった
ものなのでしょうか。
2.避難先が必要な場合には…
避難先を見つけようと思っても、
経済的事情などから見つからない場合、
女性であれば、異性カップルの女性被害者
を対象とするシェルターに避難することが
考えられます。
この場合、MTFのトランスジェンダーも
含まれます。
一方、過剰なフェミニズムのせいか、
男性がDVの被害者と想定するのが希薄で、
男性用シェルターがまだ少ないことから、
被害者が男性の場合の受け入れ先を
見つけることが難しいケースは多いのが
現状です。
しかし、男性被害者を対象とする
DV相談窓口も増えていますので、
被害者が男性であれば、内閣府男女共同
参画局が運営するDV相談窓口に
問い合わせるなどして、相談窓口を探す
ことも良い方法です。
また、この場合の男性には、FTMの
トランスジェンダーも含まれます。
次に、裁判所による措置としては、
どのような方法があるのでしょうか。
3.DV防止法と同性カップルへの取扱いとは…
DV防止法とは、「配偶者からの暴力の
防止及び被害者の保護等に関する法律」
というのが正式名であり、配偶者という
フレーズがあるので、一見結婚している
夫婦だけが対象なのではないかという疑問
があります。
たしかに、2014年の改正以前は、
DV防止法の適用対象を、現に婚姻している相手方
か、婚姻期間中に暴力を受けていて離婚した
相手方から暴力を受けた者に限定されていました。
ここにいう婚姻には、事実婚も含まれます。
しかし、2014年のDV防止法改正により
保護対象の範囲としては、
生活の本拠を共にする交際相手から暴力を
受けた場合も、外部からの発見・介入が
困難で、継続的になりやすいといった
配偶者からの暴力と同様の事情があり、
保護命令の制度の対象として被害者を
救済する必要があることから、
生活の本拠を共にする交際相手からの暴力
も含まれることになりました。
ただ、同性カップル間の暴力については、
保護命令を出した事例はあるものの、
裁判所が適用対象と考えていない傾向が
あり、長期にわたり適用事例がないため、
保護命令の発令を受けることが困難な
可能性は高いです。
しかし、被害者に半径〇メートル以上接近
することや被害者に面談を強要することを
禁止するために、民事保全処分として
接近禁止の仮処分や面談強要禁止の仮処分
の発令には、暴力や強要などの危険さが
うかがえる証拠の揃い具合次第で保護命令
の発令を受けられる余地はあります。
なので、躊躇せず裁判所に申し立てること
は重要なのです。
また、近年の同性パートナーシップ証明の発行
など、同性間パートナーシップに対する社会的な
理解の浸透を背景として、今後、裁判所の見解が
変化する可能性は十分に考えられます。
そして、裁判所に同性カップル間の
DV防止法適用の必要性を認識してもらう
ためにも、保護命令の申立てをためらう
べきではないですねぇ。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
DVは時間の経過につれ、エスカレート
するおそれがあるので、早めに策を講じる
ことは重要です。
また、身体的暴力を受けていて緊急性が
高い場合には、犯罪被害者のための
宿泊施設提供制度などを数日だけでも利用
できる場合もあるので、警察への相談も
重要になります。
あなたもパートナーのDV(暴力)などの
ことでお悩みではないでしょうか。
いまいちピンと来られていない方は、
ご自身で悩み判断せず、
是非お問い合わせください。
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