セクシュアリティをオープンにして
会社で働いていて、
そのうち同期入社の社員と比較して、
配置転換や昇進・昇格、同じ部署での
賃金・労働時間などの点で差別的待遇を
受けていると感じるときに、
何かしらの法的措置を講じることが
できないだろうかと気になるっていうのは
珍しいことではありません。
配置転換で犠牲になると、
ワークライフバランスに影響が出ることは
多いです。
昇進・昇格で犠牲になれば、
生涯賃金で損をすることって
十分に考えられます。
残業時間や賃金で不当に差別されることが
継続されていくと、過労によって連鎖的に
ご自身に悪影響が出ることも十分に
あり得ます。
なので、問題を自分の中に留め我慢を
続けることが、より悪循環を引き起こす
ことがあります。
もし、このような待遇の差異が、
セクシュアリティを理由にされていたので
あれば、その差別的取扱いは
許されるものではありません。
まず、セクシュアル・マイノリティたる地位は、
「人がその意思によらずに社会において継続的に
占める地位」であり、
労働基準法3条にいう
「社会的地位」に該当すると解釈できます。
そして、セクシュアル・マイノリティは、
会社で働く上での職務遂行能力との
関連性はないことがほとんどなのです。
よって、例えば、
配転命令の違法性に基づいて懲戒処分の
無効確認や、
昇格の確認、
昇格時以降の差額賃金の支払、
未払残業代(賃金)の支払などを求める
ことが可能だと、十分に考えられます。
ただ、セクシュアリティを理由とする
差別的取扱いであるかどうかは、
表立って明らかではないケースが
ほとんどなので、
具体的なデータをもとに、日常的に上司が
セクシュアル・マイノリティを嫌悪する
ような発言の言動などを主張し、
差別的取扱いがセクシュアリティを理由と
するものであることを立証する必要が
あります。
そして、それぞれの差別的な待遇ごとの
違法性などについては、
以下のようなことがあります。
1.配転命令が無効なときとは…
配転命令については、まず一般論として、
職種や勤務地が限定された労働契約の場合、
それに反する転勤命令には労働者の同意が必要に
なります。
なので、それに該当するにもかかわらず、
労働者の同意なくなされる転勤命令は無効
なのです。
職種や勤務地が限定された労働契約でない
場合でも、判例によれば、以下の要件を
満たす場合には、権利濫用として無効と
なります(最二小判昭和61年7月14日
労判477号6項)。
①業務上の必要性が存在しないとき
②不当な動機・目的が存在するとき
③通常甘受すべき程度を著しく超える
不利益が存在するとき
セクシュアル・マイノリティを理由とする
配転命令は、明らかに
上記②不当な動機・目的が存在するとき、
に該当するので、無効と考えられます。
特に、従前の業務と乖離の大きい業務への配転の
場合は、嫌がらせや見せしめなどの
不当な目的の存在が推測され、
職務遂行とは無関係な差別に基づく、
違法な配転命令だと考えられます
(東京地判平成7年12月4日労判685号17頁)。
そのほか、
職能資格の降格を伴う配転命令は、
そもそも就業規則などにおいて
その引下げが可能とされているものなどの
労働契約上の根拠なくしてなされた場合、
無効となる可能性があります(東京地決
平成8年12月11日労判711号57頁)。
また、
職務内容の変更に伴う賃金切下げは、
労働者の同意や就業規則の定めなく
なされたものは許されるものでは
ありません。
2.昇進・昇格の不当な差別とは…
昇進・昇格については、
人事権の行使として、
会社には一定の裁量が認められています。
昇進・昇格による賃金の上昇は連動していて、
労働基準法4条には、女性に関して賃金差別を禁止
しています。
一方、セクシュアル・マイノリティについては、
セクシュアリティに基づく賃金差別禁止などを
明文化した規定が存在しません。
しかし、
セクシュアル・マイノリティたる地位は、
労働基準法3条にいう
「社会的身分」と解釈でき、
それによる差別は職務遂行能力とは
無関係なので、
許されるものではありません。
3.賃金・労働時間についての法的措置とは…
賃金や労働時間については、
雇用契約・就業規則・労働関係法規の定めに
従って決定され、
それらに違反する取扱いがなされた場合は、
契約・就業規則・法規に基づいた是正を請求する
ことになります。
そして、そもそも賃金・労働時間に関する
差別的取扱いが、
セクシュアリティを理由としての
職場でのいじめ・嫌がらせとみられる
場合、
会社に対して安全配慮義務違反として
慰謝料を請求することも考えられます。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
すべての会社・企業に、
セクシュアル・マイノリティの方々が
安心して働くことができる環境が
整っているとは、
必ずしもいえるものではありません。
これって不当な差別的取扱いだと
感じたら、
いざという時に追及していくために、
日頃から証拠残しなどの準備を始める
ことは良策といえるでしょう。
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