パートナーと別れる・離婚するとき。住宅ローンがある場合には…

夫婦の離婚同性カップルが別れるときに

は、財産分与の問題が生じます。

 

財産分与は、プラスの財産だけが対象では

なく、マイナスの財産も含まれます。

 

マイナスの財産の代表的なものには、

住宅ローン

が挙げられます。

 

 

 

 

 

 

これは、法律婚である友情結婚の場合や、

婚姻に準じる内縁・事実婚でも、

同様の問題が生じ得ます。

 

 

離婚に伴う財産分与は、以前の記事でも

触れたことがあるように、

パートナーと別れを決断!財産分与ってどうするの?

2019年8月21日

 

対象財産は、婚姻中その共同生活のために

築き上げた財産をいい、共有名義のみに

限らず、一方の名義でも共有財産とすべき

ものも含まれます。

 

 

同性カップルパートナーシップ解消も、

現在同性婚が日本で認められていないため

に法律上の離婚ではないにしても、

離婚の財産分与に準じた考え方で進めて

いく方が望ましいといえます。

 

 

そして、不動産(マイホーム)及び購入時

の住宅ローンも財産分与の対象ですが、

単に当事者間の協議した内容に従って名義

を変えればよいというものではなく

金融機関への相談や承諾も必要になり、

当事者間で勝手に進めてしまうと後々に

支払に関して不利な状況に置かれることが

あります

 

 

 

 

 

 

 

住宅ローン債務を担保するために自宅に

抵当権が設定されていても、

パートナーと別れるに際して財産分与など

を原因として所有権(持分)の移転登記

手続をすること自体は、

抵当権者である金融機関の承諾がなくても

することはできます。

 

 

しかし、住宅ローン(ペアローン)を組む

契約を締結するときに、

自宅の名義を金融機関の承諾も得ずに変更

することが、ローンの期限の利益喪失事由

とする契約内容になっていることが

一般的です。

 

 

ここで、期限の利益とは、

設定された期限まで借金の返済などの

債務の履行を猶予してもらえる債務者の

利益(権利)のことをいいます。

 

 

 

 

 

 

例えば、AがBから100万円を借りて1年後に返す

約束をしていたとすると、

Aにとって約束した1年後の返済期限が到来するまで

は、お金は返さなくてもよいことになり、

これを「期限の利益」といいます。

 

なので、期限の利益を喪失するとは、

債権者に請求されると待ったなしに返済義務の

ある状態に陥ることをいいます。

 

 

そして、住宅ローンの返済にあたって、

期限の利益を喪失するというのは、

契約で認められていた分割払いが

認められなくなり、

金融機関からローンの残高について

一括で返済をするように請求されることに

なってしまうのです。

 

 

住宅ローンの期限の利益喪失事由には、

債務者の破産任意整理個人再生などの

債務整理や、差押を受けたときのように、

債務者の返済能力や資産状況が悪化する

こと以外にも、

不動産の名義を勝手に変更するなど、

住宅ローンの設定契約の条項に違反すると

期限の利益喪失に該当し、

ローン残高を一括で返済しなければ

ならないことがあります。

 

 

ここで、不動産の名義を変更する手続に

金融機関の承諾が不要な分、

金融機関に知れずに不動産の名義変更を

してしまい、その後も今まで通り返済し

続ければよいのではという発想も

浮かびそうですが、以前の記事でも触れた

ことがあるように、

住宅ローンが返済できないとき!破産?競売?任意売却?

2020年3月17日

 

先々に新型コロナウイルスや災害事情など

により、倒産や休業により収入が絶たれて

住宅ローンの支払能力が脅かされたときに

返済期間の延長・返済額の減額・

ボーナス払いの変更といった

返済計画の見直しを金融機関に相談するに

しても、契約違反があれば担当者の心証も

悪くなり、返済計画の見直しどころか

ローン残高の一括返済を求められ、

支払うことができず競売手続が進められ、

家を失うことにもなります。

 

 

また、不動産と住宅ローンの名義は

そのままで別れた後は

元の配偶者・パートナーが住むという

発想もありますが、住宅ローンの契約違反

になります。

 

例えば、夫婦の離婚で、自宅と住宅ローン債務者

の名義は夫のままにしておくものの、実質的には

物件は妻に譲るケースです。

 

住宅ローンは、そもそもローンの名義人が

完済するまで住み続けることが前提で契約

を締結するので、

離婚・パートナーシップ解消にあたる

財産分与後に当事者間の取り決めによって

名義人でない方が物件に住み続けた場合、

住宅ローンの契約条項のうち

期限の利益喪失事由に該当し、

ローン残高の一括返済を求められる可能性

や、返済能力に問題が生じたときに

返済計画の見直しを相談するにしても

不利になることも考えられます。

 

 

当事者が別れることで、自宅の名義を変更

するには、金融機関の事前承諾が必要に

なるものの、当事者の資力に問題なければ

承諾することも例外的にありますが、

実際には承諾しないことが大半です。

 

 

では、不動産・住宅ローンの財産分与を、

ローンの契約違反にならないように進める

には、どうしたらよいのでしょうか。

 

 

1.ローンの借換え・名義変更を検討する場合には…

住宅ローンは、夫婦・カップル共同で

返済しているケースも多く、一般的な感覚

でいうと、別れた場合には契約変更が

認められるべきだと思えそうですが、

別れることや離婚は住宅ローンの

契約変更の対象にはなりません

 

これは、住宅ローンが金融機関(債権者)

と名義人(ローン債務者)との間で

交わされる契約なので、完済までの間に

別れる・離婚に至っても、それが契約変更

の要項として認められないからです。

 

 

とはいえ、

ローンの借換えという方法を採ることは

あり得ます。

 

 

 

 

 

 

つまり、残高ローンについて新たに抵当権

を設定するということです。

 

 

名義人でない方の配偶者・パートナーに

安定した収入がある場合には、

物件をその者の名義に変更し、

返済に支障のないプランを組み立てるため

にローンの借換えを検討するのも手です。

 

 

ローンの名義変更・借換えを行う場合、

その者に返済能力があるかを確認するため

に厳格な収入審査が行われます。

 

 

残高ローンを返済するのに十分な収入が

ある場合には審査は通過しますが、

別れる・離婚時点では収入が十分でない

場合には、

連帯保証人を立て、新たに連帯保証契約を

交わす必要も出てくるため、手続に時間を

要します。

 

 

とはいえ、住宅ローンの名義人・名義人で

ない方の配偶者・パートナー間で、

経済力に差があるケースもあり、

ローンの借換えが困難な場合もあります。

 

 

そのような場合には、住宅ローンを完済

した後に家の所有権(持分)を取得できる

ようにしておく方法が考えられます。

 

これは、名義人でない配偶者・パートナー

が将来取得できる権利を予約しておく

というイメージです。

 

では、具体的にどのような方法なのでしょうか。

 

 

2.別れるときは仮登記、完済したら本登記!

不動産の所有権移転(名義人の変更)を

するには、法務局で登記申請する必要が

ありますが、

登記には、現時点では名義を変更せず

将来的に権利を取得できるようにしておく

ための「仮登記」もあります。

 

 

 

 

 

 

仮登記とは、所有権移転登記(本登記)

をするための手続上・実体法上の要件が

具備されていない場合に、将来行われる

べき本登記に備えて登記上の順位を保全

するためにする登記をいいます。

 

 

仮登記自体はあくまで仮なので所有権を

正式に取得することにはなりませんが、

後に本登記をすると、仮登記の順位で

本登記が行われるので、仮登記よりも後に

登記を者へ対抗力をもつことができます。

 

 

 

 

 

これを別れた時の財産分与に当てはめる

と、住宅ローンを完済した時にようやく

財産分与により所有権(持分)を移転登記

するとなれば、

住宅ローンの完済時までに、

不動産の名義人が他の第三者に売ったり、

差押えされたりして、

名義人でないパートナーにとっては

いつ自分が住む場所を失うのかという不安

を抱き続けることになります。

 

 

なので、

離婚協議書やパートナーシップ解消の

合意書の財産分与の条項では、

別れる時には仮登記にとどめ、

住宅ローン完済時に本登記手続を

行う内容が無難です。

 

名義人であるパートナーが所有権(持分)

について財産分与を原因とする

所有権(持分)移転登記手続をする義務

あるのを認め

一旦住宅ローンの完済を停止条件とする

条件付所有権(持分)移転仮登記手続

し、

住宅ローン完済時に仮登記手続の

本登記手続をする内容になります。

 

 

別れる時に申請する登記は、

あくまで仮登記であり、所有権が移転する

わけではないので、金融機関の事前承諾も

必要でなく、期限の利益喪失事由にも

該当しません

 

 

そして、仮登記後に売却や差押が

あっても、(将来の本登記の時に)

仮登記の順位が優先されるので、

売却や差押などによる権利のリスク回避

にもつながります。

 

 

ただし、差押が住宅ローンを組むときの

金融機関による抵当権に基づく場合、

仮登記よりも前にされている登記である

以上、仮登記は優先されないので、

注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

3.まとめ

いかがだったでしょうか。

 

パートナー・配偶者と別れる・離婚する

際に、住宅ローンが残っている不動産を

財産分与するには、当事者間で勝手に

名義変更を進めると金融機関との

ローンの契約違反になって一括返済を

求められる可能性があるので、

注意する点が多々あります。

 

 

将来所有権(持分)を取得するための

仮登記も、名義人の住宅ローンの滞納の

リスクはあるものの、

リスクヘッジとしては良策といえます。

 

 

その取り決めの内容を書面化する際には、

後々の手続のためにも公正証書で作成する

ことをおすすめします。

 

 

また、不動産の名義は片方のパートナー

で、住宅ローンの支払は二人で折半

している場合には、以前の記事でも

触れたことがあるように、

LGBT話題でよくあるパートナーと不動産を購入!ローンで注意することがあります。

2018年2月11日

住宅ローンを折半しながら同居生活。もし将来同居解消するときには…

2019年5月18日

 

贈与税のことや同居解消に至ったときの

金銭の清算に関する対策を講じておく

ことは重要です。

 

 

あなたもパートナー・配偶者と別れる

のに、住宅ローンの問題も絡んでいる

ことで、お悩みではないでしょうか。

 

 

いまいちピンと来られていない方は、

ご自身で悩み判断せず、

是非お問い合わせください。

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