LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の
当事者の方で、いずれ将来的に疎遠に
なった親の相続を受ける場面に出くわす
ことはあります。
セクシュアリティのことで、親との壮絶な
不和があったとしても、相続を受ける側に
なることに変わりはありません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/相続できない.jpg)
特に性別取扱い変更もされた、外観の性別
が変わったというような
トランスジェンダーの方は、レズビアン・
ゲイ・バイセクシュアルの方よりも生活や
周りとの関係で一変することもありがち
なので、疎遠などの事情があることは
珍しくありません。
しかし、親子の関係で勘当・断絶・絶縁
などは、感情面で縁を切るということは
あったとしても、そのことをもって法律上
の相続の権利は何ら変わらないのです。
これにおいては、「絶縁書」などのような縁を切る
意思を明確にする書面を残したとしても、
籍を抜いて子(親族)でないようにすることは
できません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/09/絶縁-300x200.jpg)
なので、勘当・絶縁などの事情があれど、
遺産においては、相続欠格に該当し相続権
を失ったり、廃除により相続権を剥奪
されない限り、相続する権利はあります。
そして、相続する権利があるということ
は、預貯金などのようなプラスの財産だけ
ではなく、
借金や保証債務などの
マイナスの財産も相続する
ことになります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/借金2.jpg)
その場合に相続放棄をするには、以前の
記事でも触れたことがあるように、
原則として、相続人は、自己のために相続
の開始があったことを知ったときから
3か月以内にしなければなりません。
この熟慮期間内に、相続放棄の手続を
しなかった場合には相続を単純承認した
ものとみなされてしまいます。
ただし、特別な事情がある場合には、
相続開始の原因たる事実・自分が
法律上相続人となった事実を知った時から
3か月経過した後でも、相続放棄の申述が
できることがあります。
では、どのようなケースでしょうか。
1.熟慮期間の起算点が繰り延べられることがある!
相続放棄の申述において、熟慮期間の
起算点の例外を認めた判例があります
(最判昭和59年4月27日判決)。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/朗報.jpg)
まず、原則的には、相続人が相続開始の
原因たる事実及びそれによって自分が
法律上相続人となった事実を知った時から
起算します。
そして、相続人が上記の各事実を知った
場合であっても、各事実を知った時から
3か月以内に相続放棄をしなかったのが、
以下の①~③の要件をすべて満たせば、
熟慮期間は、相続人が相続財産の全部又は
一部の存在を認識した時又は認識し得べき
時から起算します。
①被相続人に相続財産が全く存在しないと
信じたことによる
②被相続人の生活歴、被相続人と相続人と
の間の交際状態など諸般の状況からみて
その相続人に対し相続財産の有無の調査を
期待することが著しく困難な事情がある
③相続人において上記のように信じるに
ついて相当な理由があると認められる
この判例により、相続放棄が認められる
ケースが広がったといえます。
しかしながら、①~③の各要件を裁判所に
認めてもらうために、詳細な事情・事実
などを示す必要があります。
そこで、上記の判例の元となった事案から
検討してみるのも良策です。
では、大元の事案は何なのでしょうか。
2.借金(負債)があることを知ったら早く行動した方がよい!
上記の判例の事案は、
被相続人は妻と離婚しており、相続人で
ある子どもともほぼ交流がありません
でした。
被相続人は、約1,000万円の連帯保証人となって
おり、債権者への責任を果たすことなく
亡くなりました。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/01/連帯保証.jpg)
相続人は死亡後1年経過したある日、債権者から
請求があり、急いで相続放棄の申述をし、
家庭裁判所に相続放棄を認めてもらいました。
ところが、債権者は納得いかず、
期間経過後の相続放棄の無効を主張し、
訴えを提起したのですが、
最高裁(上記の判例)は家庭裁判所の
下した相続放棄の有効性を認めました。
この事例では、債権者からの請求によって
はじめて被相続人の借金の存在を知り、
存在を知ってから3か月以内に相続放棄の
手続をとったことがポイントになります。
また、被相続人と交流がほとんどないなど
の事情があって、財産を知らなかったこと
も、重要な鍵となっていました。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。
相続が起きて熟慮期間が経過した後でも、
特別な事情があれば相続放棄ができる場合
もありますので、債権者からの請求書など
がすでに届いている場合には早めに手続を
進めることをおすすめします。
また、相続人となったときに相続財産の
調査に難がある場合には、以前の記事でも
触れたことがあるように、
熟慮期間を伸長する手続を進めることも
良策といえます。
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