LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の
当事者の方で、疎遠になった親の相続を
受ける側に立場になることがあります。
これは、仮に過去のカミングアウトにより
勘当を受けたなどの経緯があった
としても、法律上親族との関係は切れない
以上、親が亡くなると相続人になります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/勘当.png)
特にトランスジェンダーの方で
性別取扱変更もされたといったケースでは
外観から変わるので、レズビアン・ゲイ・
バイセクシュアルの方のように外観だけで
は(言わない限り)分からない場合と比較
すると、疎遠・絶縁といったケースは
あり得ます。
まず、相続とは、人間が死亡した場合に、
その死者(被相続人)が生前に有していた
財産上の権利や義務を一定の範囲の親族が
包括的に承継することをいいます。
承継される財産(相続財産)には、
預貯金や不動産のようなプラスの財産
(積極財産)だけでなく、債務(借金)の
ようなマイナスの財産(消極財産)も
含まれます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/借金2.jpg)
そして、相続人は、原則として、
自己のために相続の開始があったことを
知ったときから3か月以内に、
相続を承認する(受ける)か
放棄する(受けない)かを
選択しなければなりません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/タイムリミット.jpg)
この相続の承認・放棄を決める期限
となる、3か月以内の期間を、熟慮期間
といいます。
起算点は、亡くなったときからではなく、
あくまで亡くなり相続が起きたことを
「知ったとき」からです。
相続の承認には、2通りあります。
1つ目は、単純承認といい、相続人が
全面的に被相続人の有していた相続財産を
包括的に承継することです。
つまり、オーソドックスな「相続を受ける」という
パターンです。
2つ目は、限定承認という方法です。
これは、相続人が相続によって取得する
積極財産を限度として、被相続人の債務
など(消極財産)について責任を負担する
という留保を付けた上で承認する方法
です。
簡単に言うと、例えば、相続して受けた
財産が1,000万円あり、借金が3,000万円あった
場合に、承継された借金の3,000万円のうち
相続財産の1,000万円で弁済すればよく、
残額2,000万円は弁済する責任を負わずに済むという
方法です。
仮に、このケースで単純承認をして
しまうと、借金3,000万円全額を返済
する責任を負うことになります。
つまり、2,000万円については、
自己の財産から持ち出してでも弁済
しなければならないことになります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/マスオさん.jpg)
次に、相続放棄とは、相続人が相続開始に
よる効果を全面的に否定することで、
相続人にならないようにすることを
いいます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/放棄2.jpg)
相続放棄は、
単に「私は相続を受けません!」と伝える
だけでは足りず、その手続を家庭裁判所で
行わなければなりません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/家裁.jpg)
また、相続放棄は、相続が起きる前にあらかじめ
することはできません。
つまり、「父さん(母さん)が亡くなった時でも、
私は相続を受けません!」と、事前に手続を
しておくようなことはできないのです。
相続放棄をすると、財産を受け継ぐことは
できませんが、債務も受け継がないので、
借金の方が多い場合には弁済する必要は
ありません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/一安心.png)
ただし、負債を受け継いでしまうことを
想定して、相続放棄や限定承認を選ぼうと
思っていても、法律上状況次第で
できない、つまり、単純承認する方向に
なってしまうことがあるのです。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/リスク.jpg)
1.単純承認したとみなされる場合(法定単純承認)とは…
相続人が積極的に相続の承認の意思表示を
しなくても、次のようなことに該当
すれば、単純承認したものとみなされ、
限定承認や相続放棄ができなくなって
しまいます。
①相続財産の処分
「処分」には、相続財産を売却するなどの
ほかに、次のような内容も該当します。
・建物の取壊しや放火
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/建物取壊し.jpg)
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/放火.png)
・預貯金の解約・払戻
払戻金を自分のために消費した場合は、相続財産の
処分に該当します。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/01/預貯金.jpg)
なので、払戻しを受けた金銭は、自分の財産と区別
できるようにしておく必要があります。
外観上紛らわしい行為はできる限り避けた方が良い
です。
・債権の取立て
被相続人が賃貸不動産を所有されていた
場合に、その賃料の支払いの請求や、
賃料の振込先を自己名義の口座に変更
するような行為は、相続財産の処分に
該当します。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/占有の根拠.jpg)
ただ、被相続人の債権について、
相続開始前から弁済期が到来している場合、
相続人が債務者へ支払請求することは、
「相続財産である債権の価値を維持する行為」と
いえるため、相続財産の処分には該当しません。
・株主の議決権行使
等々
ちなみに、次のような行為は、原則的に
法定単純承認には該当しません。
・建物の維持のための修繕(保存行為)
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/大工.jpg)
・遺体や身の回りの品、僅少な金銭の受領
・交換価値のない物の形見分け、多くの
遺産のうちの僅かな物
・遺産による葬儀費用や治療費の支払い、
墓石や仏壇の購入
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/葬儀.jpg)
・被相続人の債務の弁済
相続財産から充てる場合は処分に該当する可能性が
ありますが、相続人が自分の財産から弁済する場合
は処分に該当せず、法定単純承認になりません。
等々
②熟慮期間の経過
自分に相続開始があったことを知ってから
3か月を経過してしまった場合を
いいます。
③限定承認や相続放棄をした相続人が、
矛盾するような背信行為をしたとき
相続財産の全部又は一部を隠匿したり、
勝手に消費したりするような行為などを
いいます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/悪人.jpg)
ところで、負債が多い場合には限定承認と
いう方法も有効に思えそうですが、注意
することがあります。
2.限定承認にはデメリットがある!
限定承認は、負債の弁済をするにあたり、
相続財産の範囲内で済むことがメリット
です。
しかし、この手続を行うには、相続人全員
が共同して、相続財産目録を作成して、
家庭裁判所に提出しなければなりません。
なので、相続人のうち、一部が単純承認
してしまうと、限定承認ができなく
なります。
そして、限定承認がされると、家庭裁判所から選任
された相続財産管理人が、資産と負債を管理し、
管理人において資産を換金して負債の返済に
充てることになります。
また、限定承認をすると、みなし譲渡所得
が発生して、納税が必要になります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/課税.jpg)
単純承認の場合は被相続人が取得した状態を相続人
が引き継ぐだけですが、限定承認をした場合、
被相続人が相続開始日にすべての資産を相続人に
時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得税が
課せられます。
特に、自宅不動産について譲渡所得税が
発生することは多いです。
限定承認は、親族間売買になるので、
居住用財産の3,000万円特別控除などの
優遇制度が適用されません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/01/えっ.jpg)
この譲渡所得税は、被相続人の債務と
なり、相続税の計算上債務控除の対象に
なります。
ただ、この譲渡所得は、被相続人の
準確定申告を、相続開始を知った日から
4か月以内にする必要性が出てきます。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。
相続財産において、借金の承継が
一体どうなるのかを考えたり、相続自体に
関わりたくないという想いがあるなら、
相続放棄を選ぶことは有用的
です。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/借金が財産より多い-300x84.png)
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/拒絶.jpg)
また、民法上・判例上、熟慮期間の3か月
を過ぎていても、例外的にできる余地も
あります。
あなたも上記のように、同じようなことで
お悩みではないでしょうか。
いまいちピンと来られていない方は、
ご自身で悩み判断せず、
是非お問い合わせください。
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