同性カップルの方々で、自分が将来
亡くなった際に財産の権利をパートナーに
移すために、生前に遺言で準備をしておく
ことが考えられますが、その際に親族側に
財産を返還することができる遺留分権利者
がいることが気にかかりますよねぇ。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/02/遺留分減殺請求-300x81.jpg)
民法上、将来の相続に向けての準備を
考える際に、相続させたくない人が
いたり、そのような人が遺留分減殺請求
すらできないようにしておきたいという
事情がある場合に、一定の要件のもとで、
本人(将来の被相続人)の意思により
相続人にさせないように家庭裁判所に請求
できます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/家裁.jpg)
これは、以前の記事で触れたことのある
相続欠格事由には該当しないものの、
被相続人が相続人に自己の財産を相続
させたくない事情を想定してます。
そして、この手続のことを推定相続人の
廃除といいます。
廃除の対象となるのは、遺留分を有する
推定相続人であり、兄弟姉妹以外の相続人
をさします。
兄弟姉妹には遺留分がないため、
相続させたくないときは、パートナーなど
他の者に遺贈などすれば済むだけの話なの
です。
さらに、廃除のためには、
相続させたくない者に以下の要件の
いずれかが備わっている必要があります。
①被相続人に対する虐待
②被相続人に対する重大な侮辱
③推定相続人の(①・②以外の)著しい
非行
しかし、この廃除の手続には難題な点も
あり、後の親族との関係や相続に関する
ことで注意することがあります。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/リスク.jpg)
1.廃除事由が認められるにはハードルは高い!
廃除を認めるための要素となる、
推定相続人の所為が被相続人に対する
虐待、重大な侮辱又は著しい非行に当たる
かどうかは、家庭裁判所は、両者について
様々なことを考慮しなければなりません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/09/廃除事由-261x300.png)
その上で審判例の多くは、推定相続人に
おいて、相続的協同関係を破壊するような
行為かどうか・それによって現に協同関係
が破壊されているかどうかを基準に判断
しています。
そして、廃除を求められた推定相続人の
有責性が顕著に高いといえるかどうかも
判断の目安になります。
実際に、廃除が認められた例としては、
・末期がんで自宅療養中の妻に対し、療養に極めて
不適切な環境を作出した上に、その人格を否定する
ような暴言をした夫について廃除が認めらた
(釧路家北見支審平成17年1月26日)
・在学中から虞犯事件を繰り返し、その挙げ句
暴力団員と婚姻して婚姻に反対している父の名で
披露宴招待状を出すなどした事案で、
親が多大な精神的苦痛を受け、名誉を毀損された
として廃除が認められた
(東京高決平成4年10月14日)
等々があります。
とはいうものの、そもそもの原因を
本人(被相続人)が作り出したような場合
や、一時の激情に駆られたような場合
には、廃除は認められません。
また、単なる素行不良や浪費といった事実
だけでも認められません。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/09/素行不良-300x205.png)
なので、廃除の請求が家庭裁判所に
認められること自体のハードルが高いの
です。
また、要件のハードルの高さだけでは
なく、手続の性質上が故の難もあるの
です。
2.廃除の審判をするにあたり、余計に関係が悪化しやすい!
廃除には、本人(被相続人)が生前にする
方法(生前廃除)と遺言でする方法
(遺言廃除)があります。
生前廃除は、本人が推定相続人の廃除を
家庭裁判所に請求し、審判によって廃除
されます。
遺言廃除は、本人が遺言書で推定相続人を
廃除する意思表示をしたときに、遺言者が
死亡後、遺言執行者がその推定相続人の
廃除を家庭裁判所に請求し、審判によって
廃除されます。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2017/09/遺言-1.jpg)
ただ、推定相続人の廃除の審判事件は、
廃除を求める申立人側と廃除を求められた
推定相続人はとが対立する紛争性の高い
事件となります。
家庭裁判所としても、廃除を求められた
推定相続人の陳述の聴取をしなければ
ならないことになっています。
生前廃除では心理的負担がかかるという
ことから、遺言廃除を選べばこれについて
は回避できます。
しかし、廃除原因について当事者から反論
された場合、遺言執行者では亡くなった
本人に代わって正確な対抗手段を講じる
ことが難しいというデメリットが
あります。
なので、廃除事由(虐待・重大な侮辱・
著しい非行)の要件のハードルをクリア
できるわけでもなく、受贈者である
パートナーが遺留分減殺請求される事態を
避けるのが目的の場合には、遺言書の付言
を活かすことが考えられます。
3.廃除より遺言書の付言事項がすすめられるのは…
以前の記事でも触れたことがあるように、
遺言者がなぜそのような遺言の内容にした
のかの想い・感謝の気持ちや、遺された
パートナーと仲良くやっていってほしい旨
について書くことは重要です。
![](http://amethysthoumu.com/wp-content/uploads/2018/06/感謝.jpg)
もちろん、付言事項の内容をきっかけに
親族側が憤慨して争いにならぬよう注意を
払う必要があります。
また、「どうか遺留分減殺請求はしないで
ほしい」というような露骨に遺留分に
ついて触れる内容を記載するのは避けた方
が良いです。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
民法上では、遺留分を有する推定相続人の
廃除の制度は設けられていますが、
認められるのは受理件数のうち
わずかな程、ハードルは高いのです。
これは、被相続人が廃除の制度に乗じて、
推定相続人に封建的な関係を強いることが
ないように安易に廃除を認めない傾向に
あるためだといえます。
また、ご自身が過去にセクシュアリティを
めぐって親子間で不和があったとしても、
セクシュアリティは重要な人権なので、
廃除事由(虐待・重大な侮辱・著しい
非行)に該当するようなことがない限り、
親の相続権のことで心配することは
ありません。
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