同性カップルの方々で、将来自分又は
パートナーが亡くなったときの財産の承継
に備えて、遺言書を作成することが
あります。
遺言書を作成する際には、以前の記事でも
触れたことがあるように、
遺言は、遺言者の死亡したときからその
効力が生じるので、死ぬ前に作成したり、
作成しても撤回・取消・変更も自由に
できます。
とはいえ、遺言能力に注意する必要が
あります。
遺言は、15歳以上の者で意思能力があれば
作成できます。
意思能力とは、行為の結果を理解するに足りるだけ
の精神的能力をいい、
大体7~10歳程度の精神的能力をいいます。
遺言の効力が生じるのが遺言者の死亡後なので、
その内容により遺言者が不利益を被ることがない
ので、
制限行為能力制度(未成年者・成年被後見人・
被保佐人・被補助人)のように
本人を保護する必要性がないので、
行為能力までは要求されていません。
行為能力とは、契約などの法律行為を単独で行う
ことができる能力をいい、制限するにあたっては
年齢や意思能力の程度に応じて基準が設けられて
います。
しかし、能力次第で、遺言を作成するに
あたり、一定の要件を満たさなければ、
有効な遺言ができない
ことがあります。
では、どのような状態で作成された遺言が
無効となってしまうのでしょうか。
1.遺言者の能力とその時期で注意することとは…
まず遺言能力は、遺言書を作成するときに
必要です。
なので、作成時点で遺言能力があれば、
遺言の成立後に遺言者が意思能力を喪失
しても、遺言に影響はありません。
そして、遺言者が成年被後見人であれば、
精神上の障害により事理弁識能力を欠く
常況、つまり意思能力が認められない状態
にあるため、そのままでは有効な遺言が
できません。
成年被後見人が遺言をするには、作成時に
事理弁識能力を一時的に回復する必要が
あります。
さらに、その際に医師2人以上の立会いが
必要です。
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をするとき
に精神上の障害により事理弁識能力を欠く状態に
なかった旨を遺言書に付記して、
これに署名・押印します。
これは、自筆証書遺言・公正証書遺言・
秘密証書遺言のいずれの方式でも行うことが
できます。
秘密証書遺言で作成する場合には、医師による付記、
署名・押印は、封紙に行います。
上記のような医師の立会いが必要となる
特例は、成年被後見人の場合だけで、
被保佐人・被補助人の場合には、
意思能力さえあれば、上記のような立会い
がなくても遺言は有効です。
ちなみに後見・保佐・補助とは、下記の
記事でも触れたとおりです。
また、後見人・被後見人の関係において、
遺言の効力に影響が出る場合があるので、
注意が必要です。
2.パートナーが受遺者かつ後見人でもある場合の制限とは…
民法上、成年被後見人が後見の計算の終了
前に、後見人(その配偶者や直系卑属も
含む)の利益となる内容の遺言をしたとき
は、その遺言は無効となる規定が
あります。
これは、成年被後見人が、成年後見人の影響を
受けて、後見の管理計算を曖昧にするような遺言を
し、成年後見人の不正行為が隠されてしまう
おそれがあるからです。
ただし、成年後見人が直系血族・配偶者・
兄弟姉妹の場合は、この制限はなく、
遺言は有効となります。
なので、仮に成年後見人を将来の受遺者で
もあるパートナーが就任している場合で、
養子縁組をしているときには直系血族に
該当するので、遺言は無効には
なりません。
上記の遺言の制限は、法定後見
(成年後見)に関する場合に適用され、
任意後見の場合には適用されませんで、
任意後見契約の発効後であっても、遺言は
有効です。
また、保佐・補助の場合にも適用
されませんので、同様です。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。
遺言書を作成する際には、作成時の遺言者
の能力によって一定の制約があります。
なので、遺言書の作成は生前ならいつでも
いいやと後回しにせず、早めに作成する
ことをおすすめします。
また、遺言の作成における一定の制約の
対象が成年被後見人のみとなる規定に
おいても、相続が起きた際に意思能力を
めぐってトラブルになることも
あり得ます。
ですので、仮に成年被後見人に該当
しなくても、判断能力の衰えがみられる
場合には、医師による立会いや、医師に
よる付記や診断書を得ておくことで、
後のトラブルを回避するようにしておく
ことは良策です。
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