LGBT、セクシュアル・マイノリティの
就労事情の話題では、以前から
トランスジェンダーの方にとって健康診断
を避けたいがために雇用形態を非正規で
選ぶことが多くみられ、
健康診断の対応の見直しや貧困などに
ついて問題となっていました。
しかし、2020年4月から施行された、
パートタイム・有期雇用労働法
(短時間労働者及び有期雇用労働者の
雇用管理の改善等に関する法律)により、
正社員・非正規雇用の壁がなくなります。
ちなみに、中小企業は2021年4月から
施行されます。
これによって、
今までの正社員特有の特権が廃止される、
非正規雇用者にとって朗報、
事業者が法改正に注意しないと後で大変な
ことになる、
といった様々な情報が流れていますが、
正しくもあり、
本質的にはそうでもなかったりする法改正
だったりします。
では、同一労働同一賃金とはどういった
もので、非正規雇用者にとって
本当に朗報なのでしょうか。
1.同一労働同一賃金の定義・適用対象とは…
まず、就業時間形態には、
フルタイム(1日8時間、週40時間)と
パートタイム(スポットのシフト制)が
あります。
そして、雇用の期間において、
無期雇用と有期雇用(雇用契約期間が〇年
と定められている)があります。
正社員は、フルタイムで無期雇用の
就業形態をいい、
フルタイムで有期雇用の場合は契約社員
に該当します。
パートタイムで働く場合は、
パート・アルバイトに該当します。
そして、パートタイム・有期雇用労働法
では、事業者は同じ仕事(同一労働)で
基本給・賞与(ボーナス)・手当(通勤、
住宅、家族、役職など)を
正社員、契約社員、パート・アルバイトの
雇用形態で区別してはならず、
不合理な差を設けることが禁止されます。
ここで注意しないといけないのは、
差を設けること自体が禁止されるのでは
なく、あくまで差を不合理にすること
です。
また、単に不合理な差を設けることを禁止
することの規定だけでは絵に描いた餅に
なってしまうので、
もし正社員との待遇差がみられるようで
あれば、従業員が会社にその待遇差の理由
について問うことができ、
会社にはその理由を説明する義務を
負います。
ただ、現在会社がこの規定に違反しても
罰則規定がないのが弱点です。
次に、同一労働同一賃金に基づくと、
非正規雇用者からみるとお得な情報に
聞こえそうですが、本質的には
そうではありません。
では、どうしてでしょうか。
2.非正規雇用者の条件が上がるわけではない!
同一労働同一賃金によって、企業側へのメリット
として非正規労働者への適正な評価が行われる
ため、モチベーションが上がり、雇用形態を
問わず社員全員が切磋琢磨し合う環境となり、
労働生産が高まり売上が上がっていくという
メリットがあるため、
多様な働き方を選択できる社会を実現し働く人
一人ひとりがより良い将来の展望を持てるように
することを目指していると、
厚生労働省は表向きの発表をしていますが、
実は危険な政策なのです。
それは、正社員という雇用形態の価値が
下がるところにあります。
同一労働同一賃金を実行する、
つまり正社員と非正規労働者の給与や待遇
を同等にするためには、
非正規労働者の賃金や待遇を上げるのでは
なく、
正社員の給料を下げたり、退職金や
終身雇用などの財源の切り崩しによって
同じにするしか方法のない企業が多いのが
現状です。
また、非正規労働者にも賞与(ボーナス)
を支給することが財源的に厳しいので、
賞与を廃止してその分を給与に組み込んで
しまう方法で正社員の賃金が実質的に
下がってしまうことも十分にあり得ます。
よって、同一労働同一賃金の導入は、
非正規雇用者の給与・待遇などが革新的に
上がるわけではなく、今までの正社員の
特権がなくなる(給与・待遇などが
下げられる)ことで、相対的に上がって
いるように見える仕組みなのです。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。
セクシュアル・マイノリティの方の
就労事情で、特にトランスジェンダーの方
が健康診断を避けるための非正規雇用の
選択やそれに伴う貧困事情が統計的に多く
深刻なものですが、
同一労働同一賃金の導入が必ずしもの
改善策ではなく、
正社員の非正規雇用化をさせやすいよう、
ブラック企業が悪用する武器を与えて
しまっているといっても過言では
ありません。
働き方改革は、実は働かせ方改革だったと
いうのは、様々な制度においていえること
ですので、
一方的に流れる情報だけを鵜呑みにする
のではなく、本質的な仕組みは何なのかを
見極める考えることは重要なのです。
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