企業がセクシュアル・マイノリティを理由
に不採用とする場面は、
残念ながらあるようです。
例えば、会社の新卒採用面接において、面接担当の
役員による最終面接の際に、
「何か他に言いたいことはありますか。」
との問いに、
自分を偽って生きるのはつらいので、
セクシュアル・マイノリティであることを
話したとします。
そして、最終面接が候補者の最終意思確認
の形式的なものにすぎないはずなのに、
その方以外の候補者が全員採用され、
その方が不採用になるという、
明らかにセクシュアル・マイノリティ
を理由にしている
ようなケースがあります。
このように採用拒否の場合以外にも、
内定取消しや試用期間中の本採用が拒否
されるというケースもあります。
たしかに、企業がどんな人を雇うかという判断
(採用・不採用)について、ある程度の自由は
あります。
そして、社会的身分を考慮することは、
憲法にいう法の下の平等に反するとは
いえ、
「あくまで憲法は国家と国民との間に
おいて規律する法であり、
私人間においてはその主張は困難だ」
という考えから、諦める傾向もあります。
だとしたら、このような企業が存在すると
いうのは、
セクシュアル・マイノリティの当事者の方
が就職・就業のために自分を偽ることを
強いられる状況になりかねないのです。
また企業側も、その方が大事にはしたく
ないはずと高を括っていることもあるの
です。
実は、法的に争える可能性はあるのに、
その方法や理屈を知らないだけで
大きいチャンスを失うことになるのは
珍しくないのです。
また自身の受けた精神的苦痛をお金に
変えることができたら、
また新たなスタートを切れることにも
つながります。
では、そのような不当な差別に対して
どのような対処方法があるのでしょうか。
1.企業に対して何を追及するのか…
セクシュアル・マイノリティを理由に
採用拒否するのは、
不当な差別として争う余地はあります。
採用前の段階は、労働契約前ですので、
採用への期待権を侵害したという
理由で、
不法行為に基づく損害賠償請求
という選択肢が考えられます。
そもそも、セクシュアリティは個人の
プライバシーの問題であり、
職務遂行上の能力とは関連性がないので、
採用において考慮されるべき内容では
ありません。
また、企業側が採用にあたり、求職者の
性的指向について質問・調査をすることも
慎むべきなのです。
求職者はそれに対する回答義務も
ありませんし、
回答しなかったことを理由に採用拒否した
場合も同様に争う余地があるのです。
では、求職者の人権を全うするには、どうすれば
良いのでしょうか。
2.企業の採用の自由vs求職者の人権
企業側にとって、
求職者を採用拒否・内定取消し・
本採用拒否とするのは、
一定の要件があるのです。
それは、企業側が当初知ることができず、
また知ることが期待できないような事実を知った
ときに、その事実に照らしてその者を引き続き雇用
するのが不適当だと判断するのが、
趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が
存在し社会通念上相当と是認し得る場合にのみ
許される、ということです。
なんだか堅苦しい文章ですが、
簡単に先ほどのケースに当てはめると、
セクシュアル・マイノリティである
ことでその職務遂行に影響が出る
場面でない限り、
採用拒否・内定取消しなどが違法で
ある可能性が高いのです。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。
企業側の採用の自由と応募者の人権配慮
は、いつの時代でも衝突することは
あります。
企業に追及する内容も、あくまで一例です
し、追及の仕方の段取りもケースによって
それぞれです。
セクシュアル・マイノリティにおける
採用・内定でのトラブルでは、
知らないが故に損をすることも
珍しくありませんので、
企業側が違法・不当な差別をしてないかを
探ってやろうという姿勢ぐらいで
ちょうどいいのかもしれません。
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