同性カップルや内縁・事実婚の
パートナーは、相方が亡くなったときに
相続人ではありません。
その場合に、寄与分という相続分の枠を
受け取れる余地を考えられることがある
かもしれませんが、その分で受け取ること
もできません。
ただ同性カップルの場合、カップル間で
養子縁組をしていたり、日本で同性婚が
認められて法律上の配偶者となれる
ケースでは、遺されたパートナーに
相続権もありますし、生前の行為次第では
より多く相続分(寄与分)を得られる余地
があります。
では、そもそも寄与分とはどのようなもの
で、他にどのようなことに注意すればよい
のでしょうか。
1.寄与分は相続分の不公平さを修正するもの!
寄与分とは、相続で共同相続人の一部の者
が被相続人の事業や家計などのための
資金援助や、無報酬で事業の手伝いや看護
などをしたことによって、被相続人の財産
の増加させたり、減少を防ぐような場面
で、その相続人の相続分を優遇する制度
です。
例えば、Aが死亡し、相続人である子にB・C・Dが
いて、Aの死亡時の財産が3,000万円とします。
そして、BはAさんが生前営んでいた事業を手伝い、
財産の増加に貢献し、
他の相続人C・Dは特に何もしていないとします。
この場合でも、B・C・Dが承継する額を3等分で
計算することが本当に平等なのでしょうか。
そもそも、相続開始時に残っている遺産は相続財産
の増加又は減少防止に貢献した共同相続人がいる
おかげであり、他の相続人も恩恵に預かっている
のです。
このように、寄与分を考慮せずに相続分を
計算すると、そのような貢献した相続人
が、何ら貢献していない相続人と形式的に
平等な相続分しか受け取れないとなると、
かえって不公平になりますよねぇ。
そこで、寄与分権利者がいる場合、相続分
の計算をする際には、寄与分により相続分
の修正を行います。
寄与分権利者がいる場合、
「相続開始時の財産の価額」から
「寄与分」を控除したものを
相続財産とみなして計算します
(みなし相続財産)。
なので、上記の例では、
2,700万円(3,000万円-300万円)が
みなし相続財産になります。
次に、相続人B・C・D各自の具体的な
相続分の計算において、
寄与分権利者以外の相続人C・Dについて
は、
「みなし相続財産の額」に
「各相続人の相続分」を乗じるので、
900万円(2,700万円×3分の1)と
なります。
そして、寄与分権利者の具体的相続分は、
「上記で得た額(寄与分権利者以外の
相続人の具体的相続分)」に
「寄与分」を加えた額になるので、
Bの相続分は、
1,200万円(900万円+300万円)と
なります。
ちなみに、寄与分を受け取ることができる
者(寄与分権利者)は、あくまで相続人で
あることが必要とされます。
ただし、後記3.の記載にもあるように、
相続人以外の親族であっても、被相続人の
療養看護などに尽くした者の貢献に報いる
ために、特別の寄与の制度が改正により
新設されています。
では、相続分を算定するときに、寄与分に
該当する場面とは、どのようなケース
なのでしょうか。
2.寄与分に該当するケースとは…
相続に関して、民法上共同相続人の中に、
以下の①~③の方法により被相続人の財産
の維持・増加について特別の寄与をした者
がいる場合に、その者がその分多くの財産
を相続することが認められる可能性が
あります。
①被相続人の事業に関する労務の提供又は
財産上の給付
②被相続人の療養看護
③その他の方法
①で典型的なのは、相続人が被相続人に
よって経営されている農業や自営業に無償
で参加し、財産の維持・形成に寄与する
パターンです。
ただし、寄与分が認められるには、単に
労務の提供をすればよいというものでは
なく、財産上の効果が生じる必要が
あります。
また、被相続人に対し有償で何かを行った
場合、被相続人から反対給付を受けている
ので、特別の寄与に該当しなくなります。
寄与分の主張にあたっては、そもそも寄与
した相続人がどのような行為をすれば財産
の維持になるかや、どれ程のプラスの財産
の増加・マイナス財産の減少があれば、
財産の増加になるかを客観的に示す基準は
ありません。
なので、その家業の労働時間と賃金相当額
を資料に説明できる準備をしておく方が
良いです。
次に、被相続人の生活の世話や病気の看病
が②又は③に該当するのでしょうか。
寄与分が認められるためには、単に生活の
世話や療養看護をすればよいというもの
ではなく、財産上の効果を生じることや
特別の寄与であることが必要になって
きます。
例えば、子から親に対する療養看護は、
直系血族間の扶養義務を果たしているのに
すぎないので、それのみをもって特別の
寄与とは認めらないため、何かしらの事情
が必要になります。
その例としては、
本来ならば被相続人の費用で看護人を
雇わなければならない事態において、
相続人のおかげでその費用の支出を免れた
ような事情、
被相続人に居住する家屋・土地以外には
資産や所得もなく、それらを売却すれば
扶養を受けなくて済むが、相続人から
生活費をもらっていたという事情
などです。
これらの場合に、寄与分を主張するために
は、被相続人の病状が看護人を
雇わなければならない状況であったこと・
看護にかかった時間と内容・看護人を
雇った場合にかかる費用、負担していた
生活費の金額やそれが必要となった
周辺事情などを、資料に説明できる準備を
しておく方が良いです。
ちなみに、家業に関係のない財産上の給付であって
も、③に該当し、特別の寄与として認められる余地
もあります。
例えば、被相続人の住む家を改築する際
に相続人が費用を出したようなパターン
です。
もちろん、寄与分が認められるには、
財産の価額が上昇している必要があり、
被相続人に対し有償で何か行った場合、
被相続人と契約関係にあったことになる
ので寄与に該当しなくなります。
上記のような例で、寄与分を主張するため
には、改築費用と経過年数によって寄与分
の金額が決められる以上、改修時の
契約書・請求書・領収書などを資料に説明
できる準備をしておく方が良いです。
寄与分を決定するには、第一に共同相続人の協議に
よって定めます。
ところが、協議が調わなかったり、協議できない
ときは、家庭裁判所が寄与分を主張する者の請求に
よって定めます。
次に、本来の相続人以外の親族でも寄与分
を受け取ることができる、特別の寄与の
制度とはどのような内容で、その制度が
あることでどのような影響がある
のでしょうか。
3.特別の寄与の制度は当てにできない!
寄与分はあくまで相続人が対象なので、
相続人以外の親族(ex. 被相続人の息子
の嫁など)が特別の寄与をしても、
これまでの寄与分の制度では、その親族が
報われないため、改正により特別の寄与の
制度が新設され、2019年7月1日から施行
されます。
この制度において、特別寄与者となること
ができるのは、あくまで被相続人の親族
です。
なので、
同性カップル、内縁・事実婚の
パートナーは、
特別寄与者の対象とならない
ので、注意が必要です。
行う寄与の定義については、上記1.・2.で触れた
内容と同様に、無償で療養看護などの労務を提供し、
相続財産の維持・増加したことが必要です。
特別寄与者は、相続開始後に相続人に
対し、特別寄与料の支払いを請求すること
ができます。
特別寄与料の請求手続は、遺産分割とは
別個に行うもので、
まず当事者の協議で定めて、
協議が調わなかったり、協議ができない
場合には、家庭裁判所に対して協議に
代わる処分を請求することができます。
ただ、相続人の立場としては、自分が
特別寄与料の支払義務を負うかどうか、
負う場合にどの程度の金額かを把握した上
でないと、遺産分割協議の成立を躊躇う
ことも考えられるので、この請求をするの
に期限があります。
特別寄与者が相続開始及び相続人を知った
ときから6か月以内で、かつ、相続開始後
1年以内です。
なので、もし亡くなられた本人に生前世話
をしていた親族がいる場合、上記の期間内
に特別寄与料の支払いを請求してくる
可能性があるので、注意が必要です。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
同性カップル、内縁・事実婚のパートナー
は、養子縁組などにより親族にならない
限り、相続権はなく、生前の療養看護など
を理由に特別寄与料も請求できません。
また、寄与分があることを証明する
ハードルは高く、なかなか困難なもの
です。
なので、パートナーに財産を承継させる
ためには、
遺言書
を作成する必要があります。
遺言書を作成するには、以前の記事でも
触れたことがあるように、
作成方法には注意が必要です。
あなたも上記のように、自分が亡くなった
ときのパートナーへの遺産承継のことで
お悩みではないでしょうか。
いまいちピンと来られていない方は
ご自身で悩み判断せず、
是非お問い合わせください。
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